、その穴熊がそれからかなり経つてから、若い獅子の家を再び訪ねたが、今度は前とは少しばかり様子が変つてゐて、獅子は何か不機嫌な様子であつた。
穴熊は煙草をとりだして、もぢもぢしてゐた、それは獅子に煙草の火をつけて貰ふといふ光栄に浴したいからであつた。
すると獅子は安楽椅子に横になつたまゝで
『穴熊君、わしが煙草に火をつけてやらう』
と言つたので、穴熊は飛びあがるほど心の中で嬉しがつた、しかし獅子は椅子から立ちあがらうともしないで、頤《あご》で先方をしやくつてから『向ふの棚にライターがあるから、君こゝへ持つて来給へ―』と命令的に言つた。
帰り際には『君、外套を着せてやらう、外套をこゝへ持つて来給へ―』といつた。
穴熊は自分の外套を恭々しく獅子の傍まで持つて行くと、獅子は寝そべつたまゝで、いかにも面倒臭さうに穴熊に着せた。
穴熊は森の小道を帰つてくると、ぱつたりと狐に逢つた、狐は皮肉さうに質ねた。
『穴熊君、やはり君の汚れた外套を、獅子の自由主義は親切に着せてくれたかね』
『いやこんどは調子が変だつたよ、着せてやるから、自分で持つて来いといつたんだ』
『殿様の自由主義なんてそんな
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