てゐた。
 七匹の獣達は自分達の信用を恢復させるために、そこで若い獅子を加へて、それを自分達の頭にした、この若い獅子はこれまで選ばれた獣達よりも、ずつと家柄が良かつたばかりでなく、たいへん自由主義者で、おつとりした性格で、もの判りが良いといふ評判がもつぱらなので、随つて森の獣達の人気も悪くはなかつた。
 或るとき一匹の穴熊が、森の政治向のことに関して、森の奥に若い獅子の住居を訪ねた、その時の穴熊の印象では、若い獅子は少しも自分の家柄を自慢したり、高ぶるといふ様子を見せない許りでなく、若い獅子手づから穴熊にコーヒーをすゝめたり、穴熊が煙草を吸はうとすると、獅子が自分のライターから、シュッと音をさせて火を擦り出して、穴熊の煙草に火をつけてくれる有様であつた。
『実に偉いもんだ、平民的だ、わしは感激したよ、若い獅子があれほど自由主義者だとは想像もしなかつたね、然かもわしが用件を済まして帰らうとすると、閣下手づからわしの汚い外套を持つてきて、わしに着せてくれたときには、恐縮といはうか、感激といはうか、実に感動したね―』
 と穴熊はすつかり昂奮して、獅子の自由主義を森中ふれまはつた。
 ところが
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