際パン倶楽部といふのがあつた、倶楽部では四年目毎に、各国順番で総会を開らくことになつてゐた。
 その日は各国からパン倶楽部の代表が集つて、紙風船を手でパンと叩きつぶしてその音を審査するのであつた、このクラブが何故国際性があるかといふと、世界各国の紙風船代表が、それぞれ紙風船の中に、自分の国の空気を封じこみ、その風船の口を目張りしたものを持寄り、会場でそれを叩きつぶして、風船が裂ける音響に依つて、各国の『自由の精神』の性質を知るといふ点であつた。
 第×回国際パンクラブ総会が開かれた、フランスからやつてきたクラブ員は、紙風船を手にして壇上に立つた。
『諸君、この風船の中に、私が入れて持つて参りました、フランスの風船の破れる音響について、或ひは諸君はその音響の余りに低いことに不満を覚えるでせう、然しながらこの風船の中の『自由の精神』はヒューマニズムと申しまして、決して音響が低いが故に、価値低いものではありません、将にその反対であります―』
 フランス代表は、かう弁解がましく一席述べてから、彼は掌の上の風船を力いつぱい叩いた。
 ところが風船は柔らかい生き物のやうに、グニャグニャしてつぶれな
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