つては少しも恐ろしくないフグ氏等、十五匹が蛸を中心として『魚類精神』を論じあつた。
大体この催しは、この鎌倉のグループで発行してゐる雑誌『魚類界』の座談会記事をつくるのが目的で開かれたもので、魚達は勝手気儘にどれだけ泡をふいてしやべつても構はない性質のものであつた。
この会での蛸氏の位置といふものは、なかなかデリケートなもので、一見議論はさかんなやうで、他の魚達が蛸氏の議論に喰つてかかつてゐるやうに見えるが、実は誰も蛸氏の議論を頭から押へるといふ力のあるものがなく、多くの出席者は、蛸氏の脚の一本づつをとらへて、その脚の先を捻る程度のもので、そのことで却つて蛸氏の位置が支へられ、また押へる方も蛸氏に捲きついて貰ふといふ安全さを利用した。
蛸氏もまた心得たもので、如何なる場合にも絶えず論敵の肩に手をかけることを忘れず、一匹の子分が脚を離れても、必ず他の一匹を捉へてをくといふ蛸氏の腹黒さは徹底したものであつたが、それを知つてゐてか知らないのか、とにかくこのグループは表面甚だ仲の良いものであつた。
座談会が終ると、一同に酒が出た。
『座談会も終つたからいゝが、実際こんなことは書いてもら
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