ぴしぴしと男の尻を引つぱたき、強制的に果樹園の安全なことをお喋りさせたのであつた。
水が引いてから主人はお喋り男の尻を撫でてやつて『いや御苦労々々』といつて褒美の金一封を渡した上、新聞に勇士らしくかきたてさせたのであつた。
果樹園の人々は後で事情を知つてから、この望楼男のお喋りすることを少しも信じなくなつた、なぜといふに男の傍にはいつも果樹園の主人がついてゐて、鞭で尻をうつて、果樹園の都合の良いことだけをお喋りさせてゐるといふことが判つたからであつた。
百歳老人の話
ある村に、何時の頃から生きてゐるのか判らないほど歳をとつた老人が住んでゐた。
村の人々は、この老人を『百歳老人』と呼んでゐた、村随一の物識りで、村に何か面倒な事が起きると、村の人々はこの老人の住んでゐる村端れの家まで『如何したものでございませうか―』ときゝに行つた。
ごたごたがどうしてもまとまらない時は、村長が老人を迎へに行つた、老人は長い竹の杖をついて出て来た。
この竹の杖の節はくりぬかれて、中には薄荷水が詰めてあつた。
老人は村の歴史をよく知つてゐて、村の騒擾《ごたごた》を捌く智恵を沢山もつてゐた
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