にも倒れさうに傾いてゐた。
 遊戯といふのは、猿達は第一の木に飛び移るとき―『日本』と叫び、そこから次の木に飛び移るときには『的とは―』と叫んだ、そこから第三の樹に移るときには『何か―』と叫んだ、そして猿達はいり乱れて、『日本』『的とは』『何か―』と口々に叫びながら枝から枝へとび移つた。
 しまひには遊戯が混乱して、『的とは』『日本』『何か―』となつたり『何か、的とは、日本』と前後したり、めちやくちやな遊びになつた。
『諸君、落着きたまへ』と哲学的な猿が一同を見廻した、この状態では何時までたつても『日本的とは何か―』といふ疑問は解決できないから、一本づつの樹で、ひとつづつの問題を解かうではないかと提案した。
 つまり第一の枝に飛び移るときに『日本とは何か―』と叫んでしまふことであつた。次の樹では『的とは―何か』と叫ぶのであつた、が、三番目の樹に移つたとき『何かとは、何か―』と叫ばなければならなくなつたので、問題が一層わけがわからなくなつてしまつた。
 すると樹の下の波打際で、大笑ひをするものがあつた、猿達がこの笑ふものの正体をみると、それは波の音であつた。
 猿達は怒りながら質ねた。

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