、怪訝さうに、警察の門柱にビラを張つてゐる少年の手元と顔とを見較べてゐるのであつた。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
犬はなぜ尻尾を振るか
東洋電機製作株式会社の社長蛭吉三郎氏は信念の人であつた、たいへん直感的人物で物事の要領を捕へるといふ点では、社員も頭を下げぬわけにはいかなかつた、例へば社長は事務机の前に三人の社員を呼んで、それぞれ事務上のことを、三人同時に報告させ、自分は眼を細くしながら、そはそはと聞いてゐるとも、聞いてゐないとも判らない焦躁状態で、机の上の書類を両手でがさがさと掻きまはした、それでゐて三人の事務員の報告を一度にちやんと聞いてゐるといふ才能があつた。
『××君、××会社へやる品物の見積りはあれぢや、いかんぢやないか――』
さう叱つておいて次の社員に向つて、
『さうか、よろしい、ぢや君すぐ電話をかけて先方を呼び出して――』
三番目の社員には、『困るね、君もうすこし研究してそれから報告をするやうにしてくれ給へ――』といふ調子であつた。
人の話に依れば蛭氏の私宅には、電話が便所の中にまであるさうだ、彼は左手で受話器をはづし耳にもつて行き、右
前へ
次へ
全186ページ中125ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小熊 秀雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング