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源は若い男の幽霊ではあるまいかと驚ろいた、若い土工夫は確に猫イラズを嚥みはした、然し彼は次いで渓流の過の中で、鱈腹水をのんだのであつた、そのために却つて腸のなかを洗滌したことになり、岸に流れついて助かつたのだといふ、源はふんと首を傾しげ成程と合点した。
『俺は何処の土工部屋にも、ものの一ヶ月とは働いて居ない、前金踏倒し、飛つチョの名人さ』
源はかういつて、これから周旋屋へ行き、別な土工部屋へ売られて行くのだといふことであつた、逃走五度さうして舞ひ戻つて来れば、周旋屋から逃走奨励の金時計を褒美に貰へるのさ、と彼は得意になつて八字髯をひねるのであつた。
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監房ホテル
遙か彼方を眺むれば
彼は監房での人気者であつた。手を膝の上にのせて頭蓋骨を外して手で捧げてゐる恰好で茫として坐つてゐた。係官に名前を呼ばれて立ち上るときはふだんは茫としてゐるのに似ず機敏で本能的な早さがあつた。
彼は栃木県の或る町で空腹に襲はれた。彼は盗るものを物色した、彼の執拗な視線の先方に紙芝居屋の自転車が一台、原つぱのまん中に立てゝあるのをみつけた。紙
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