マスクをかけた歌うたひ
きゝとりがたいことを
ゴモゴモ口の中でいふ
一年にかぞへる位おつくりになる
つまり小鳥のやうに
ちよつぴり召しあがつて
ちよつぴりお垂しになる
僕たちは働く詩人だ
たくさん喰つて
太い糞をするよ
君は――男のくせに
女形のやうに容子ぶつて
原稿紙にむかふ
月経(つきのもの)でも
あつたやうに
二十八日目に
一篇おつくりになる
苦痛は愛されてゐる
彼等はほんとうに
人生を辛いと思つてゐるのか、
深刻らしい顔をしてゐるが、
みたまへ彼等はまだ靴を履いてあるいてゐる
ポーランドの子供ははだしで逃げたのに――、
しかも彼等の靴は鳴るのだ
そして足はこの皮をもつて保護されてゐる
頭を見給へ
帽子がのつてゐる
胸を見給へ
ヒラヒラするネクタイが
舌のやうに風を舐めてゐる
何にもかにも彼等には残つてゐる
そして苦痛だと叫ぶ権利も残つてゐる、
すべてを失つたものだけが
現実が辛いとか
人生が苦痛だとか言へるのだ、
しかし彼等はすべてを所有してゐる
彼等の周囲には
怪しげな苦痛がのこつてゐて
そつと彼が腰掛けると
下から忍びあがつて何時の間にか
膝の上にあがつて主人に可愛
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