びることの不安をもたない冷酷さで
ただ沈黙を守つてゐる。
約束しないのに
冬がやつてきた
だが木炭がない煉炭がないで
市民はみんな寒がつてゐる
でもあきらめよう
とにかくかうして
季節がくると冬がやつてきてくれたのだから、
僕の郷里ではもつと寒い
冬には雄鶏のトサカが寒さで
こゞえて無くなつてしまふこともあるのだ
それでも奴は春がやつてくると
大きな声で歌ふことを忘れないのだから
勇気を出せよ、
雄鶏よ、私の可愛いインキ壺よ、
ひねくれた隣の女中よ
そこいら辺りのすべての人間よ、
約束しないのに
すべてがやつて来るといふこともあるのだから
なんてすばらしいことだ
約束しないのに
思ひがけないことが
やつてくるといふことがあると
いふことを信じよう。
気取屋の詩人に
君にとつては人生は、
温突《オンドル》の上のやうなものだ
いつもポカポカ暖かい
君等はいゝ星の下に生れ
いゝ身分で詩を書いてゐる
人生至るところに
ベッドありと
すぐに温かいところを
みつけてもぐりこむ
僕を饒舌遊戯
乱作詩人だと罵つた
もつとも僕は食事中でも詩を書く
ところで君たちは
あまりに寡作主義にすぎる
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