さあ、若い人たちよ、
ちよつとの間
待つてゐて下さい、
すべての生活の不便はとりのぞかれます、
たがひに愛しあふ時間を
労働時間八時間の中に、
働きつゝ愛しあふ日がくるでせう、
ふたりの生活の
くるしみの一致点に
なんてふたりの四つの眼の
ぶつかつたところに
一つの美しい月や
エメラルドや紅玉《ルビー》のやうな
星がきらめいてゐるのでせう、
ふたりの生活を
脅やかすものへの
楯つき方の一致したところに
なんて花や散歩道や
山岳はひらけてゐるのでせう、
若い人たちよ、
あなた達の生活の
苦しみの一致したところから
その苦しみの共働的な
追つ払ひのために
たたかふ仕事を始めたところから、
殆んど調和的に愛しあふ権利を
公然と主張したらいゝ、
そして樹と月と星と花と山とに
自然に触れるために
連れだつて行つたらいゝ、
時の青春よ、
それは逃げ去るものであるが、
あわてゝ追つてはいけないものよ、
自然な闘ひは
あなたにいつまでも
愛し合ふ力を与へ
青春を失はせないでせう。
愛の出稼人
われら愛の出稼人、
草鞋を履いて
田圃に行かうか、
靴を履いて
会社に行かうか、
教科書抱へて学校に
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