行かうか、
あるひは飛行機にのつて
敵を攻めに行かうか、
人類の愛よ、
キリギリスよ、
お前は細々と石と石との間に鳴いてゐる、
呼吸《いき》絶えんとして
絶えず、
あゝあ、情けない話だ、
いさましく我等、
愛の出稼人として出発し
大きな鎌を手にして
不正義を刈つて
正義の束をつくらうとしたが、
種の播き手は少なく
稲の刈り手は多かつたから
仕事はすぐおしまひになつた、
出発のいさましさに引き較べ、
しよんぼりとした
引揚げよ、
そして愛はキリギリスのやうに
石と石との間に鳴いてゐる、
呼吸《いき》絶えんとして、
絶えず、
あゝあ、情けない話だ、


あなたの寂寥に答へて

寂寥を私に訴へようとした
苦しさうなあなたの眼よ、
あなたはその寂しさの性質を
どうしても言葉で表現できなかつた、
わたしはすべてを知つてゐる、
何のためにあなたが苦しんでゐるかを、
あなたは私を
絶対的な愛でとらへることが
到底不可能です
そのことを考へてほしいだけです
わたしはブルジョア的な
恋愛至上主義でも
生活の上での愛情主義者でもありません、
わたしはたんなる生活人であり
社会の子です
解放されたものであり
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