やうに
私は希はうと思ふ、
ほんとうにそれは珍らしいことにちがひない、
すべての人々は秋は悲しいといふのに
あなたはそれを楽しいといふことは、

でもそれは真個《ほんと》うのことだ、
凋落するものは木の葉であつて
あなたとわたしの心ではなかつた筈だから

勇気を出して
あなたはこの楽しい秋の間に
『家事の改革』をおやりなさい
秋の葉は散る
ふと眼を木の幹にをとしてみると
木はどんなに冬の襲来に備へて
いさましく武装してゐることか、
どうぞあなたは私へのかはりに
木の幹にはげしく接吻して下さい、
自然の木と人間の生活の甘さにがさと
なんとよく似通つたものがあるかに
驚ろいて下さい、
すべての人々にとつても秋から悲しみを
拭ひさらねばならない
最初にそれをした貴女のために
恋にもあれ、労働にもあれ
とにかく秋と幸福との抱擁とを
最初にそれをした貴女に
この詩を贈る、


労働の中の愛

農村では、
生活の歌や田園での
麦の把の忙がしい投げあひのさなかに
うつくしい健康な人は笑ふのです、
都会では、
工場の雑音の
たがひにいりくんだ
整然とした音のなかで
あのうつくしい健康な人は笑ふのです、
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