つて始めて
この国も文化的な国の資格がある
殿様、若様、坊ちやま、男妾に類した
ノッペリとした面付をした文学
もちまはつた肌ざはりの悪い散文精神、
その種の文学が幅を利かす、
そして我国には諷刺文学が生れる必然性がない――
などと合理化したり逃げを張つたり、
アゴのしやくれた文学、トガリ鼻の文学の
若い芽を摘むことばかり、強いヤキモチが、
それは文学上のヤキモチでなく
杜会的立場からのヤキモチを焼く、
芥川龍之介はさすがに偉らかつた、
彼は杜会的な風邪をひいて
鼻水をだらだら垂らしながら死んでいつたが、
目本の文学の残された仕事に就いて
遺言をのこして死んでいつたが
曰く『鼻の先だけで暮れのこる――』と、
×
『僕は学生なんです――』
とその時、学生は改まつた口調でしやべり出した、
そこで私は彼を押しとどめた
『まあ、さう学生を強調し給ふな』
教科書の頁を飛ばして読まうが、
飛ばして読むまいが
卒業後の就職には一苦労することは同じだ、
出来ることなら学生らしく頁を飛ばさないで、
また、在学中に、作家廻りなどの
悪い癖をつけないがいゝ、
『僕は就職はあきらめたんです
諷刺文学をやら
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