うと思ふのです
よろしく御指導下さい――』
『それはよからう、ゴーゴリの小説に
出て来るやうな人物が
われわれの国には少なくない
人物はゐる、しかし作品が出てこないのだ
君もまた人物としては、諷刺的存在だ、
しかし君は自分の個性を圧倒するやうな
真理の上手な語り手になれるかね、
もし成りそこねたら、
他人が君をカルカチュアのしつ放しで
君は滑稽な人物として一生を終ることになる、
だから諷刺作家になるなら
諷刺負けをしないやうに
大いに諷刺で他人に攻勢に出るんだね、
それがなかなか難しいんだよ、
学生よ、
まあカユイところに手が届かないといつて
さういらいらするな
背中を出し給へ、僕が掻いてやらう、
もし僕が君の背中を掻いてやつて
それで君の気が楽になるのなら
諷刺作家志望などを取り下げて
工場の倉庫番にでも就職し給へ、
ほんとうに君が素裸になつて
自分で自分の背中を掻く力がでたら
また改めて僕の処に訪ねて来給へ、
馬だつて横木に背中をこすりつけて
ごりごりと掻く智慧をもつてゐるよ、
どうせ我々の背中は
千年待つても誰も掻いてくれる筈がないさ、
君はどうも背中が掻くなつて
僕の処にやつて
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