四人の勇者達は
たがひにりん子をいたはりながら
東中野の尾山の家へ繰り込んだ。
十九
尾山の家は男住ひの寒々とした感じであつた、
尾山は隣家にあづけてをいた
わが児のサクラ子を連れて来た
サクラ子は不意の沢山のお客に
眼をみはつてをどろいた、
間もなくはしやぎ出した
りん子も妙に落着いた気持になつて
勇敢に安坐を組んでよくしやべつた、
『動物詩集』を出した草刈真太は
りん子の傍を離れまい/\と
おそろしく努力を払つてゐた。
尾山は妻を喪つた後の寂寥さに
ときならぬ女客を迎へて
部屋の空気の和やかさを
楽しんでゐる風であつた、
アナアキスト詩人の古谷典吉は
彼女を半分だけ愛し
残りの半分は彼女の態度を眼に余つた
苦々しいものゝやうに沈黙してゐた
大西三津三は、たゞもう無邪気に
女の若さと語ることの嬉しさで一杯であつた。
次第に夜は更けてきた
反対に人々の眼は益々冴えて
沈黙勝になつていつた。
二十
夜は悪戯者で意地悪だ、
夜の計画は、夜は遂行できないが
昼の計画したことは夜できる
四人の中幾人かの詩人は
明るい間に計画してをいたこと
彼女を独占的に愛したいといふこと
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