とになる、
美しい彼女が泊るところがないなんて
想像するさへ愚劣なことだ
男の住んでゐる世界であれば
彼女の泊るところはある筈だのに
十七
――いや、実は、りん子さん
誤解しないで下さい――。
どうです諸君、今夜は『酒場の窓』の
著者を中心にして夜を徹して語りたいと思ふが
諸君、賛成してくれ給へ――
何といふ素晴らしい提案だ、
女を中心に徹夜で語る
話題が尽きたら男達は
殴り合ひをしたら退屈は救はれる、
どうやら、さういふ危険な座談会になりさうだ、
怖気づいて二人の詩人は去つた。
そこで六人は四人に整理された、
残つた者は何れも勇敢にして選ばれた者だ。
十八
――誰かこのうちで独身者が居ないかね
そこの室を借りよう、
みんな四人共独身者だよ、
親がゝりや、間借人は駄目だよ、
夜通ししやべるんだから
周囲に気兼ねをするやうぢやね
誰か、一軒家を借りてるものがゐないのか
尾山清之助、君のところがいゝ
さうだ賛成だ
尾山は最近独身者になつたのだから、
衆議一決した、
尾山は一ケ年程前に妻を喪ひ
六つのサクラ子といふ
遺児と暮らしてゐた
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