三、四登場、米搗バッタのやうにお低頭をしながら)
○合唱婦人、(歌)
   おゝ、可哀いさうな、
   イザリサン
   一里の路も遠うござる、
   途中の小川で
   ものおもひ
   おゝ、可哀いさうな
   イザリさん
   あなたの住居は
   橋の下
   雨が、
   ポッツリと鼻に
   ポッツリと頬に
   ポッツリと額に
   雨のしづくが
   三つ四つをちる。
○青年一、(群の中から飛び出して絶叫する)やめてくれ、新しい時代は、情緒の性質を変へたのだ、女達の同情心の対照は何んていつまでも変らないのだ、病人か、子供へか。さあ、センチメンタルな道徳をうちやぶつてくれ、ロマンチシズムさ、行動だ、こいつに首つたけになるんだ、恍惚になるんだどこまでも追求するんだ、どこまでも、どこまでも、どこまでも、どこまでも、最後のところまで。
○合唱いざり、(歌)
   御同情、ありがたう
   御軽蔑、感謝
   打擲、多謝
   足蹠[#「蹠」に「ママ」の注記]、結構
   手かせ、足かせ
   お引づり廻し、大歓迎。
○青年二、(憤つて群からとび出し)なんて此奴等の存在は、空気の
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