、天帝よ、先祖よ、
  面長奴が、わしから白服をうばつて
  カラスのやうな黒い服
  着ろとぬかす、面長の罰あたり奴、
  わしは嫌ぢや、
  白い服は死んでも殺されても脱がぬわ
  哀号――、哀号――、哀号――、
老婆《ロツパ》は消えいらんばかりのかなしみと
驚愕とにわなわなしてゐる
規則は怖ろしい力をもつて
ゐることを知つてゐるから
今にも服をはぎとらられさうな恐怖に
とらはれて頭を低く
大地にこすりつけて哀号する、
――騒ぐな婆ども、
  うぬ等は、ついこないだも
  泣いたり、咆へたりした許りだ
  なにかにと………[#「………」に傍点]の改正には
  出しやばつて反対しくさる、
  白服を色服に変へぬ輩《やから》は
  ………………[#「………」に傍点]の主旨に
  …………ロクでなしぢや、
  さかさハリツケものぢやぞ、
面長はなだめたり、すかしたり
朝鮮の伝統的な白服を
新しい服装に改めさせようとする、
だが深いところから
水が流れてゐるやうに
老婆たちの悲しみも
深いところからやつてきてゐる
老婆は憤りと悲哀の列をつくり
夜の幕は年寄たちにとつて
重い袋のやうに心によ
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