息を吐いたり、
不規則な心臓の鼓動よ、
動乱の世界の私の歌うたひよ、
いつになつたら一層良い環境で
私に喜びの歌をうたはせてくれるだらう。
IV
孤独の超特急
触れてくれるな、
さはつてくれるな、
静かにしてをいてくれ、
この世界一脆い
私といふ器物に、
批評もいらなければ
親切な介添《かいぞへ》もいらない、
やさしい忠告も
元気な煽動も、
すべてがいらない
のがれることのできない
夜がやつてきたとき
私は寝なければならないから、
そこまで私の夢を
よごしにやつて来てくれるな、
友よ、
あゝ、なんといふ人なつこい
世界に住んでゐながら、
君も僕も仲たがひをしたがるのだらう、
永遠につきさうもない
あらそひの中に
愛と憎しみの
ゴッタ返しの中に
唾を吐き吐き
人生の旅は
苦々《にが/\》しい路連れです、
生きることが
こんなに貧しく
こんなに忙しいこととは
お腹《なか》の中の
私は想像もしなかつたです。
友よ、
産れてきてみれば斯くの通りです、
ただ精神のウブ毛が
僕も君もまだとれてゐない、
子供のやうに
愛すべき正義をもつてゐる、
精神は純朴であれと叫び
生活は不純であ
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