う、
私はお前が訪ねてくるたびに
死を考へ、生を考へ、
そして私はこの二つのことを
こころから歌ひつくして悔恨はない、
お前がやつてくると私は怒る、
そして敵といふものの正体をはつきり見る、
私の中の敵、
敵の中の私、
混んがらがつた敵味方の中から
絹の布をピリリと引きさくやうに
敵の部分を引きちぎることができる、
私は絶望を大変可愛がつてゐる人間だ、
龍よ、お前と私とは闘はう、
誰だ、
私と龍との間に
なまじつかな人間が仲裁に入るのは、
私はシヱ[#「ヱ」の小文字]クスピアの「リヤ王」のやうに
――龍と怒りの中に入るな、
と私のたたかひの本能に
水をさす者を罵しるだらう、
敵と私との間にゐるものは絶望よ、
お前はどんなに私をふるひたたせるだらう、
私の怒りは塩のやうに
ナメクジを溶かしてしまひたい、
私はリヤ王のやうに憤りしやべり、
画家ゴヤのやうに髪の毛を逆立てゝ
口から泡をふいて仕事をしたい、
絶望よ、
お前は可愛い奴だ、お前をヒシと
抱き緊めるとき
私の心臓は手マリのやうに弾んでくる、
不幸がこのやうに私を激させてゐる、
呼吸《いき》を吐くべきときに吸つたり、
吸ふべきときに、
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