足りない
小さな苦痛はお芽出たい
私は言葉の
追撃砲をもつてゐる
君も何か武器をもて
機関銃でも
曲射砲でも、
野砲でも、
君は銃口を開きつ放しで
間断なく弾をおくれ、
我々は鉄ではない
我々は生きた人間だ
我々はどのやうに叫んでも
射撃のために銃身の焼けることなどはない。


我等は行進曲《マーチ》風に歌へ

おのれの技術の未熟さを棚へあげろ
ロクでもない詩人は
日本語を呪ふ――。
ソビヱットへ生れかはつたら
果して彼は立派な詩が書けたか
私は保証ができない
彼はいふだらう、
どうもロシア語は韻律的ではないと――。
ぜいたく者奴が、
何処へ生れようが同じことだ、
情熱のないものには歌がない
君に教へてやらう、
どうして日本語がリズムを生むかを、
敵を発見したもののみが
感情が憎悪のために湧きたつのだ、
君は日本語の韻律に絶望した
そして言葉の孕んでゐる現実に
たよつて詩を書くことを主張する、
なるほど、なるほど、
言葉がリズムを背負こんで
君を訪ねてきたときだけ君は歓迎する
鶏がネギを背負つて
鍋にとびこんできたら
さぞ君は嬉しからう
だが何事もさうお誂へ向きにはいくまい、
君は新し
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