私はわからない、
何んにも知らない、
私はそろそろ憎まれだした
私が歓呼をあげるが、
誰も歓呼をあげない、
私は勝利をみた、
だが君は何処にも勝利をみないといふ、
私はそれでは夢をみたのだらうか、
君が敗北の現実をみてゐる時間に
私が勝利の夢をみてゐるといふのか君よ、
そして君は憎しみの鍬で
私のところの煉瓦を砕きにやつてくる
私の粗暴な愛は愛ではないのか、
感動は疲労しない、
そして私は火のやうに稼ぎだす
それは空騒ぎではなく
鬱積されたものを
相手の顔の上へ嘔吐するのだ、
怒りの情熱は
いつの場合も空つぽの顔《ママ》を充実させる、
才能の最後の一滴の
したたりをもだし切ることができるだらう、
忘れてゐた言葉、
それは一ぺんに召喚される
憤れ、理由を押したてゝ、
自由に憤るもの、
それは良い旗手だ、
巧者な闘ひ手だ、
君よ獲物を
とらへたときの、蜘蛛の
情熱を想像し給へ、
あのやうに言葉の綾をもつて
敵を捉へなければならない、
針を立てないハリネヅミ
鳴りださないガラガラ蛇、
これらの同居人は
闘ひのアパートから追ひ出してしまへ、
攻勢にでないもの、
それは無用の長物だ。
空
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