飯くひ
あゝ、夜は眠る然も熟睡である
プロレタリアートの
薔薇をどこに紛失したか
君は知つてゐるか、
それは小鳥が咬へて行つたか
誰かが盗んだか、
いづれも正しい、
労働への感動は失はれた
お前の花はそのためにしぼんだ、
とり戻せ
プロレタリアートは
あらゆる薔薇を、
美しいものを
労働の中から発見せよ、
あゝ、私は歯をむき出して
ものをしやべる人種である
その美しさを誰が知らう、
口をつむんだお上品な方々には
私の素直さはお嫌ひだ
ばくはつする口の労働
舌の早さよ、
考へてゐることは即ち
しやべつてゐることと同じだ、
しやべつてゐることは
勿論――考へてゐることだらう、
私はその方法を採る、
私の詩は尖塔《せんとう》にひつかゝつた
月のやうに危なかしいものではない
夜ふけて、月がまはれば
尖塔もぐるぐるまはる、
そして朝には離ればなれになつてしまふ、
私の詩は空を掃く
嵐のホーキか、
唾液ですべる私の舌は
機械油で滑る車輪のやうに労働する。


春は青年の体内から

永遠に歌ひ継《つ》げ
我等の歌をもつて
夜から暁へのリレー
死ぬものから――生きるものへ
バトンを手渡せ
だまるな、饒
前へ 次へ
全37ページ中13ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小熊 秀雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング