真綿でくるんだ
君の心臓に風邪をひかせろ、
歯をもつて雷管を噛め、
そして思想を爆発させろ、


政治と文学

私は私の従順性を単純にうけいれて
くれる理想の時代がやつてきたら
私はあらゆるものに
屈服しても後悔しないだらう、
だが今はさうはいかない、
愚劣な政治性が
いかに世間に横行してゐるか、
そしてこれは
作家の単純さや素朴さ
従順さを音を立てゝ喰つてしまふ、
そして口を拭つていふ
――この作品は案外うまくなかつた――と、
しかも喰はれる鼠は
死を前にしてながいこと
惨酷に猫のために玩具《おもちや》にされた、
私の従順性は
けつして軽忽に政治に引渡さない、
あらゆるものが今一人として
政治的に武装されてゐないものがない、
愛されること――、
それは決してこびることでない、
政治と文学に就いて
我々はもつとたがひに反撥する
正しい理由をみつけださう、
――政治に可愛がられる文学
とんでもない話だ、
作品の社会性の点検
まづそれを自分一人でやつてのけよ、
それこそ政治性との無言の一致だ、
それで結構だ、
単なる政治はまだ私の詩より汚ない、
政治も文学も
今は一つの桶に入つてゐる

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