厳粛さと
青年の勇気は
なんと新しい時代の
蠱惑的な美しさをもつて
相手に肉迫してゐることだらう
青年よ、
我々は環視の只中にある、
あらゆるものに見守られてゐる。
熱心に祈りの叫びをあげながら
現実のつらさに
眼を掩つてゐる君の老いたる父や母にも――
吐息を立てゝゐる兄や妹にも――、
これらの身近なものは君を守る
だがとほくのものは
ただおど/\としてゐる許りだ。
信じたらよい、
君は夢の中の物語りをも――。
君のみる夢のなんと喜びに
みちた感動の彩りをもつものよ、
我々は知つてゐる
青年は青年の夢が
どのやうな性質の
ものであるかといふことを、
ふるへよ、
君の肉体を、
護れ、
君の感情を
そして君は入つてゆけ
もつとも旋律的な場所へ、
老いたるものにとつては
苦痛の世界であるが
我々青年にとつては
感動の世界で、ある処へ。
悪批評に答へて
卑怯な男に光栄な日が何日続くだらう、
彼の批評は一つの作品に
面とむかつてムンヅと組みついてくることをしない、
小股すくひや、後からの組みつき
あるひは通り魔のやうに
作品の上を横切つて
聞きとりがたい声で何やらつぶやいて通る
私の二百行の詩を五行の
印象批評で片づけてしまふ
彼の批評のすばらしさよ、
私の詩がヂャアナリズムに乗つた時
その瞬間彼は私の詩をとりあげた
その瞬間私は恥辱を感じた、
同時に彼が我々の陣容の
よき護り手ではなく
単なるヂャアナリズムの用心棒であることを暴露して。
彼のもつてゐる批評の尺度と
ヂャアナリズムの尺度との
何といふ偶然的な一致よ、
プロレタリア作家たちよ、
我々は批評を恐れてはならない、
私はほめられると嬉しい、
また悪く言はれると腹が立つ
だがそれはほんの眼をパチリと
まばたく間だけのことだ、
実は今では私は褒められても嬉しくなければ、
悪く言はれても腹がたたなくなつた、
真実な批評家のみが我々を感動させる、
彼を指して
理論や批評をもつて
大衆を正しい方向に導いてゐるものと考へちがひをするな、
実は彼は批評ではなく
大衆や作家にむかつて恐喝文を書いてゐるのだ、
脅やかしてまで大衆を
己れの方向にむかはせようとする
彼の理論は
将にファシスト的色彩を帯びてきた、
真理に熱心だといふこと――、
なんといふ涙ぐましいことか、
然しあまりに熱心さの故に
われわれは彼のやうに
恐ろしい独断
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