クで無数の線をひく、
そこで彼等は数十万年目に
月と金星と土星のコースが
今日合致するといふことを知ることができた、
なんといふ偉大な人間の仕事だらう――。
だが学者たちは月を星を、
この光る空の機関車のどれをも
自分の思ふ引つ込み線にひき入れることも、
ポイントを返して行き違ひにすることも
人間の力では不可能なんだ、
空の光るものたち、
光る機関車たちは
その日私にどんな土産物をもつてきてくれただらう。
その土産物はかうだ、
私にとつてはこの三つの光る物たちが
現れる丁度、一週間程前に
私の同志《タワリシチ》が自殺したといふ事実があつた。
あゝ、その星たちが運行し
近づきあつてゐる時に――、
同志は思想的苦しみのために
自滅にちかづいてゐたといふことであつた、
数十万年目の月と星との遭遇と
またこれらのものゝ離反のそのやうに、
いまでは私と友とは
永久に相逢ふことができなくなつた、
いまは私一人で
この美しい月と星との集合を見た、
それが彼等月や星が私へもつてきた第一の土産であつた。
第二の土産。
生きのこつてゐる私にとつての――、
星よ、ありあまる程のお前の印象であり、
そのお前の光りである、
生きてゐる私の手にお前たちの光りはとどく。
そのために一層私の手は美しく見えた、
私は友の死でこの一週間憂鬱だ、
そのために一層いつもよりうつむいて歩るいてゐる。
今夜の月と星はもう離れかけてゐる、
だが明日はまた我々の知らないところで、
また数十万年目に
相合ふ幾組かの星があらうとも知れない、
あるひは街で人々が騒ぎながらみるだらう、
また私は一人の同志を死なすかもしれない、
だが私はいづれにもせよ、
何時も感動をもつて星とさゝやく、
私の新しい生命について。
新しい未来について。
新しい問題について。
感動をもつて――、
お前とささやくことができるだらう。
青年の美しさ
新しいものよ、
あらゆる新しいものよ、
正義のために生れた
さまざまな形式を
わたしは無条件に愛す、
然も、君が青年としての
情熱をもつて
ふりまはす感情の武器であれば
それが如何なるもので
あらうとも私はそれを愛し、信頼す
私はおどろかない、
君の顔に
よし狡獪な表情が現れようとも
私は悲しまない、
君の行動に
臆病さがあらうとも
若し、それが君を守るものであるならば、
ましてや君の若い
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