展開されてゐる
――この人々のために良い日曜だ
――この人々のために天は晴れ
――この人々のために列車は出され
――この人々のために空気は澄み、
――この人々のために球は良く飛ぶ、
美しい縞模様のゴルフズボン、
軽快なハンチングの一群、
高らかな人もなげなる男女の笑ひ、
刈りこんだ芝生の上に
白い小さな球を置いて
ゴルフ紳士は左足を引いて立ち
容子たつぷりで
長い柄のついたシャモジでもつてカンと打つ、
――それ、小僧球だ、
吉弥は自分の頭を叩かれたやうに、
びくりと驚ろいて一散にそれ球を拾ひに駈け出す、
   ×


聖書は私の母でない

わたしが激しい憤りに
みぶるひを始めるとき
それはあらゆる「自由」獲得の
征途にのぼつたときだ
その時、私は不謹慎でなければならない
不徳でも
また貪慾でもなければならぬ
これらの悪い批評を歓迎する
下僕共は主人の規律を守らうとして
あらゆる既存の調和と道徳を愛する
『人間が犯し得る、あらゆる不善は
 いづれも皆、公然と聖書に
 記されたるもののみならずや』
          ――ウィリアム、ブレーク――
聖書もまた喰ひたりない
私が犯す不善は

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