何でもいゝから、
  ハイハイいふて頭下げるだ、
  まちがつても楯つくでねいだよ、
  土百姓の餓鬼が
  銀行さまや、活動のお嬢さまや、
  偉い、位の旦那の前に出るだあ、
  そそうのねいやうにしろよ、
  何でもハイハイいふて
  口ごたいするでねいぞよ、
すると子供はうんうんうなづく
――おつかあ
  行つてくるだ、
  おつかあ、また
  チョコレート貰つてくべいか、
――馬鹿あコケ、
  貧乏人の餓鬼は
  貰ふこと許り考へてゐるだ、
  旦那方もの食ふても、
  ぢろぢろ見るでねいぞよ、
  何万円のしんしようの旦那がたと
  水呑百姓のわしらと
  いつしよくたにならねいだぞ、
  いゝか判つたか、
  判つたら、出かけるだあ、
すると子供はうんうんうなづく
そして一散に駈けだす
   ×
見渡すと広い大ゴルフリンク、
緑りの草ははるかに
なだらかな丘のかなたにつづく、
――どうして此処にこのやうな
  広大な地域が残されて
  ゐたのだらうと
  汽車の窓からみた者は
  誰しも疑ひをもつ程にも
  誰に遠慮会釈なく
  この人々の健康のために
  土地は遠くまで
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