定型詩的現実はみつからないのだ、
それは小生にとつては
悲しむべきことだ
況んや君は定型詩で
詩を真実を
チョコレートかゼリーのやうに
菓子型に入れて
ポンポン抜いて作らうといふ寸法だな、
小生は、ただ呆然と君の主張を
捧げもちて余光を拝すのみだ。


ゴルフリンク

金曜日は恐ろしい嵐がふきまくつた
土曜日には晴れた
貴婦人の牡丹バケで
丹念に肌をたたいたそのやうに
雨で具合よく地がしめつた
日曜日には風もなく、埃りもたてぬ
お誂へ向きのゴルフ日和、
――滅法空が澄んで
  なんと気持がよいだらう、
  天は我々のために恵ぐむよ、
  天は救くるものを救くるさ
ゴルフ紳士達は嬉しさうだ、
鉄道の配車係りは
ゴルフ場行十輌連結
特別列車は[#「は」に「ママ」の注記]出発させる
   ×
破れた農家では母親ががなる、
――吉弥あ、
  けふは旦那たちがゴルフに
  御座らつしやるだよ、
  早う駅へ駈けろ
  汽車が着くだ、
母親は暗い押入れの中から
ススけた行李を引ずりだして
たつた一枚よりない取つて置きの
紺絣の着物を出して子供にきせる
子供はボンヤリと立つてゐる、
――吉弥あ、
 
前へ 次へ
全47ページ中39ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小熊 秀雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング