なかなか曲者だよ
太陽がのぼるとき扇をひらいたことはね
自由詩が苦悶してゐるとき
散文詩型を主張したことはね、
だがちよつと許り扇を煽りすぎたよ、
平清盛は熱病に罹つたのだ、
こんどは自由詩型が、
君を煽いで
君ののぼせを引き下げてやる番だ、
まはりまはつて辿りついてみれば
君の座蒲団は元の位置にある、
そこで君は暫し沈思黙考するかね、
そこで君は扇をひらいて
ひとさし舞ふかね、
それとも長良川で
十二羽の鵜を十二本の糸で操る
鵜匠の熟練に感泣した
あくまで十二行の定型詩を主張するかね、
それもよからう、
散文詩型はインテリの泣言をいれる
良い叺《かます》であつたから
今度の定型詩も相当新しい
メランコリーが入る袋になるだらう、
鵜飼の霊感から
十二行の定型を成立させる君の天才ぶりを
証明したまへ、
鵜の真似をして溺れた
烏にならないやうに
一度主張し唾みこんだものを
ふたたび吐き出す醜態をしないやうに
すべては公衆の前で君が主張したことだ、
僕は永遠の自由詩型主義者として
君の主張の看視人として
証人として起たう
定型詩とは考へたものだ
不肖、頭の悪い小生には
どこを見廻しても
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