を吹き吹きそつとくちづけの真似をしたり横向きに白い肌をみせびらかして私等の足調《あしどり》を乱す気なのか、えたいの知れない蛇のやうな妖術者、君等は限界の広さに男を探り強くたくましき理智の展望台をもつた冷たき氷原をすゝむ南極探険船のごとく、または笑ひは海のごとく従順のしとねに眠る勝利者の凱旋歌、わたしの可愛いマリー、ローランサンの女達よ、きみらは[#「は」に「ママ」の注記]手にした赤いペルシャ扇はなにか、それは情慾の焔をまぎらす風の扇だらう黒い眼鏡は妖婦のやうにくまどられ情慾の春画を覗く偽りの近眼病者、ぶらん[#「ぶらん」に傍点]とあへん[#「あへん」に傍点]に酔つたふりをする横着な舞踊役者。そつとしづかに介抱の手をまつ朝がたの泥酔であらう。
わたしの可愛いマリー、ローランサンの女達よ神秘と幻影の髪飾りはそのまゝにたゞ偽りのペルシャ扇を地に捨て軽い飛ぶやうな足どりでいらつしやい私はしつかりときみらを胸に抱き踊り踊りのあひまあひまに、おたがひがねば土の匂ひを嗅ぎあひませう、たゞ嗅いだばかりでも青春の幸福ではありませんかわたしは笑ひ笑ひのこのつたない散文詩の一篇を髪ながく色白のあらゆる地上の
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