不気味にふられてゐる
ふられてゐる
その動きはさみしいが
着物ばかりはにぎやかな
襤褸《ぼろ》である
み給へ
そのひとつひとつの襤褸に
さまざまの変つた色が
ひかつてゐるではないか
ああ……なんといふ
情ぶかいありがたい
お天道さまよ
青い三角と
赤い四角と
黒い丸と灰色の菱形と
めちやくちやに
密着《つ》きあつたりはなれたり
ぶんぶん廻つたりとまつたり
めまぐるしい奇妙な
街の建て物だらう
さあさあ静かに歩むがいい
吐息を数へながら
さあさあおとなしく眠るがいい
冷たいまちの夜露に
おまいの全く死んだ棒も
半殺しの棒も
一寸もうごかなくなり
そして眼の玉がこはばつたら
べたりとそこに坐るがいい
お前の体が
ペチャンコになつたころ
其処には血のやうな
ベンベン草が生えるだらう
女の情慾を笑ふ
女は歌ふ
雨ふり前の
午前の日ざしをあびて
野のひろびろさに
秋草の匂ひをかぎて……かぎて
秋草の温くみにくるまりくるまりあの楽焼きの
黄色いねばつちを弄《いぢ》つて
ねむらうねむらう
男は歌ふ
このかげらふの熊手を伸ばし
をんなの乳房を……
なまぬるく弄つてやらう
をんなはこころもち
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