あれ
塗りのはげた女の人形は
念入りにこてこてご粉を塗りつけ
ぎつくり。……ばつたり
ぎつくり。……ばつたり
右足をあげ左足をあげ
   ×
ああ悩ましい箱芝居である


裸体

さあみんな出て来い
裸ででゝこい
そして俺といつしよに
裸踊りをやらうよ
   ×
この真赤な月の出た街で
おもひきり踊りぬいて
踊りぬいて
死んだやうに夜露にねむらう
   ×
このうらやましい裸を見て呉れ
この狂はしい踊りをみてくれ
   ×
踊つて踊つて踊りぬいて
フフ
ペンパン[#「ペンパン」に「ベンベン」の注記]草の根もとに
みんなで仲よくねむらう……


停車場

性《たち》の悪い魂のぬすびとが
薄荷の塔にはひつた
たまらない感激であり
かたくやはらかい
不意の抱擁である
  …………
田舎のお爺さんの
頬ぺたの皺が
伸びたりちぢんだり
退屈な!退屈な
せせこましい顔の若い女が
淫奔な足音をたて
しづかな!しづかな
青白い停車場である
  …………
待合室の長椅子の
ビロードの
毛の中に
魂のかけらを
みんな忘れてゆく停車場である


三本足の人間

だらり
乾物の棒だ。
後光のさす松葉杖の間に
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