たりを圧し
女の呼吸とぴつたりとりずむ[#「りずむ」に傍点]をあはせ
はては呼吸をだんだんとせはしくはげしく
くるしく はげしく くるしく
上手に熱心にくりかへしてゐると
いつの間にか
女の瞳は燃えるやうな暖色にかへつて
およぐやうな手つきで
そのへんの草をむちうでむしつてゐた
十
二人のならんでゐる叢は
誰のめにもつかない谷底のやうなふかさで
やがてこの谷間に火のやうな霧が降り
草も木も花も
みなこんもりと暖気にとぢこめられ
ぴつたりと蛇のやうにもつれあつた
ふたりのからだは醗酵してしまつた。
箱芝居
なんといふ面白い世の中だ
みたまへ
ぎつくり。……ばつたり。
ぎつくり。……ばつたり。
×
たくさんの人形が右足をあげ
左足をあげ
まことに、まことに
巧に歩いてゐるではないか
×
みたまへ
ずつと向ふから
白い葬送馬車が
まつしぐらに街をやつてくる
あの馬車の中には
蝶つがひのはづれた人形が
しづかに/\
ねんねをして居るのです
×
ああ。街に玩具の月が出ると
燐寸《マッチ》箱を出たり入つたり
人形どもはキーキー
わけのわからぬ咽喉笛を鳴らす
×
前へ
次へ
全47ページ中11ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小熊 秀雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング