りつくればアイヌの実茶色つぶつぶ敷かれたるかも
大館町 思ひ出
秋田に住む叔母がましろきつやつやのかほなどおもふ雨のひるかな
通草とりの子ははろか山道種ふきてすぎるみゆかな頭をふりにつつ
通草とりの子にあけびをひとつくれと言ひくれざりしかもさびしかりける
色白き河原の石の反射などまなこを閉ぢておもふなりけり
河岸のうすくらがりに蝙蝠《こうもり》を追ひてこどもらいまだかへらず
縞蛭は日ぐれの沼にうごくなり吸血のすべしるがかなしき
夕暮れの沼のあさどのおぐらきに水しはつくり蛭うごくなり
馬小舎
馬小舎のうまがきり藁食す音のとどろひびきて頭にのぼるかも
床にゐて馬小舎の馬が屋《は》梁《り》を噛む癖を叱りてねいるなりけり
押切りをたくみに使ふ若者に指などきるなといひかけしかな
切り藁にほそり木まぢりゐるけらしぽきと音して手応へしかな
馬小舎の飼ばの桶に庭鳥が卵をひとつ産みてあるかも
大根畠
山蔭に薄陽をあびて大根をほればもろ手のつめたかりける
しんしんと地がなるごとし大根をほる手をとどめ土にかがみぬ
夕ざれば地の冷えまさりこんこんとつづけて咳のいでにけ
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