にせがみたり外面《とのも》はしきり吹雪するなり

眼をつぶり尊《たふ》とげのこといひたれど蟇《ひき》はもいでず鼠もいでず

酒のめば水遁火遁忍術をなすといひしがついにせぬなり

飯食みてをればとどろと裏山に爺が大樹を倒せしひびき

かんじき……を履きて爺は朝はれの雪の林にいりにけるかな


秋の船旅

船客に道化師まぢりほろほろと横笛なりぬ秋のふな旅

山遠き小能登呂《このとろ》の浜まひる日に青くかがやき草もゆるみゆ


踊る烏

なやましき夏の真昼のへんげものからす輪となり踊るなりけり

なやましき烏の踊りみぎり足いちぢるしくもあげにけるかな

ちよんちよんと二《ふた》足三《み》足かた足で歩みしろ眼をつかひけるかな

からす等のへんげの踊りみてあれば胸がくるしくなりにけるかな

恋の歌うたふ男のきまぐれを烏はかあとわらひけるかな


愛奴部落

のぞきたるアイヌの家にいたましく鮭《さけ》の半身《はんみ》のつるされしかな

和子《しやも》の子の愛奴《あいぬ》に悪口いひければ毒矢《ぶしや》木ひくぞとわらひけるかな

山焼けの遠火のけむりたなびきてかすみのごとくみゆるなりけり

草丘をのぼ
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