しろ服のあまたのなかに冬服のひとりまじりてさびし夜の街

街をゆき女の肌にわがさ指ふれておもはずおどろきしかも


畠の恋

太陽にそむきてさきし向日葵《ひまわり》はその咎《とが》にして萎《しを》れたるかも

よくはずみ侏儒の手まりのごとくなり豆鞘わればころがりいづる

わかものの畠の恋は黍殻《きびがら》をたばかされなと風ふきしかな


黄金の果実

けだものの子は大人《をとな》となりぬ一本《いつぽん》も毛のなきことが悲しかりける

黄金《きん》の実をつまむてだてをけだものの大人がよりてかたるなりけり

いささかの黄金《きん》の木《こ》の実のいさかいにけだものは刀ぬきにけるかな

いささかの黄金の木の実のいさかいにけだもの一匹《いつぴき》斃れたるかな

つめどもつめどもけだものどもは黄金《きん》の実《み》を足ることしらずけふも摘みをり

うら悲しけだものどもは黄金《きん》の実《み》をひた恋ひしゆえ傷《きづ》つきにけり

うら悲しけだものどもは銀の実をひたこひにけり嘘いひにけり

うら悲しけだものどもは銅の実をひたこひにけり首くくりけり


友を焼く

うつむきてみなもの言はず火葬
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