のうれしき糧は酒なり』とまなこにつげといふはわれなり
この床に踊りつかれてねいるごといのちをはれば満足ならむ
こもり居て親をおもへば金鼓《きんこ》うち踊るわれなり歌ふわれなり
聖人《ひぢり》のまね
日の落つる丘に手をくみ眼をつぶり聖人《ひぢり》のまねをなしにけるかな
まねなれど聖人《ひぢり》の真似《まね》のたうとけれ海にむかひておもふことなし
めをつぶるひぢりの腹にしんしんとさびしくひくく潮鳴りきこゆ
にせものの聖人は腹のすきければ聖人をやめてたちにけるかな
眼ひらけば入日は海にひろがりてあかくするどく眼に沁みしかな
にんげんのこころとなりてたちあがり着物の土を払ひけるかな
つぶる眼のまぶたあかるく入つ日は海にかがやきしづかなるかな
潜水夫《もぐり》
寒天をたたえしごとき重々し海のうねりに潜水夫《もぐり》あらはる
みな底のもぐりの男かなしけれ妻のポンプをたよるなりけり
築港《ちくこう》の真昼の砂にさかしまに潜水夫《もぐり》の服のほされたるかも
ぶくぶくと水面に泡《あわ》のたちければ潜水夫の死ぬとおもひけるかな
国境
山道に赤き苺《いちご》の雨にぬ
前へ
次へ
全29ページ中3ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小熊 秀雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング