はれこの朝はまつたく冬となりにけるかな


第四回旭川歌話会詠草

裏道の石の壁をばよぎりたり入日はあかるく足もとを照らす


第五回旭川歌話会即詠
早春(上)

み冬つきて春べとなりぬ庭松の囲ひの癖も眼にわづらはし


第六回旭川歌話会記

庭さきに馬をひきだし毛を揃へ馬耕の用意するか農夫等

第九回旭川歌話会詠草

牧小屋の真上の空はくもりぞら白雲疾くかげをさをめり

第十回旭川歌話会詠草

わが屋戸の壁にのびたる花豆のかげりにあれば色あせてけり


怪鳥
――層雲峡温泉に遊びて――

峡添《かいそへ》に路をひらくと男等はしげりにこもり高き声たつ

崖下をとをりて仰ぐ眼に紅葉深山《みやま》をいでゝ峡はあかるし

昼ながらま近く来鳴く怪鳥の羽音にしんといやしづむ山

樹をうちて羽音も荒き怪鳥のすがたをみむと息を凝らしつ

湯煙を顔にうけつゝ真青《まさを》なるつぼの湛《たゞ》へにかゞまりゐるも

たぎれども色すみ透る湯のつぼにしづむ土鼠《もぐら》のその白き足

山路に這ひもあがるとトカゲの尾きらゝと石に青光るなり

あたらしき樋《とひ》をふせつゝ湯けむりをあびる男の打つ杭の音

手拭を
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