×
そと触れてもものに
怖づてふ自《みづか》らの
かなしき性《さが》をひとりさびしむ
   ×
床屋より帰れば従妹
しげしげと顔をみるなり
二階にあがる


七夕

七夕の柳ひきづつて行つたばかりの路だ

河原の石白々とせきれいの尾も白い

ほとほと[*後半の「ほと」は二倍の踊り字使用]と困《こ》うじ果てたるわたしの生活

そつとして置け女、恋ごころ、こはれる


真つすぐな街

美瑛町のまつすぐな街に立つてゐる女憎らしい

入浴をそそる午後の陽にしんみり坐つてゐる

珠を拾つてみたい幅広い夜の街

いつぴきのけもの街を馳けぬけた深夜のひととき

ごむ靴を穿いた子供の気持である

愛しうてならない馬が街を通つた

歩るいてゐるのが不思議でならず足をながめる

拳銃を欲しくてならない女を撃つ拳銃でないのです
[#「七夕」「真つすぐな街」は自由律俳句]

無神論者の歌へる

共産主義、無政府主義、社会主義、みなくだらなしただなんとなし舌触りよし
   ×
人なみに妻を娶りて子を産みてさてそのつぎのおそろしきかな
   ×
争ひて頬をうちしが争ひて髪をきりしが妻は妻なり
   ×
子の愛を
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