き壺などかなしめるかな
科《とが》もなき妹《いも》をしかりしそののちのさびしきこころ夕雲をみる
この弱きをとこの血潮吸はむとし夜蚊はせまりぬ眉の間に
去《い》ねといひ去《い》なぬといひてかの君と争そひしこともうれしきひとつ
ゆるせ君きみ魔となれと山奥に大樹たたきて呪ひたること
この花を愛すといひて白薔薇に触るれば花のちるがかなしき
疎林落陽
うらがれの林にたてばしんじつに露はつめたくおもはれしかも
うつくしく疎林《そりん》くまなく陽はてりぬここにをとこは首くくりせむ
うつうつと林にいれば蔓草《つるくさ》の首くくりせといひにけるかな
首くくれば親がなくぞとたれさがる蔦《つた》にむかひていひにけるかも
かなしかるものの化身のみえかくれひそかにわれにせまるとおもふ
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