さ食卵のくせ鶏らはしりぬ
愛《いと》しければ鶏の餌にもと雪ほりてキャベツ畠のキャベツをさがす
折々雑記
夜となれば酒をひた欲るつぶら眼の夢遊病者となりにけるかな
しづか夜の辻うら売りを愛ほしとおもひしづかに酒のみしかな
悲しさよわれにむかひて鳴きてゐる虫の言葉をきく耳もたず
蟋蟀の鳴く音止めむと叢《くさむら》を夜露にぬれてゆれどやまずも
ていねいに夜の小路《こうぢ》の大き石はぎてみたれど蟋蟀は居ず
夜の街鉞《まさかり》もちて男ゆくふつとおそれのわきにけるかな
連れだちてあゆむ汝《な》が母みめよきを妾腹《しようふく》の子よ悲しからずや
夜の街うつろにものを言ふごとく声ひびかせて人すぎにける
われ死ぬるときのさまなど夜の床に夜着をかむりておもひけるかな
差押へその赤紙をみつめつつ兄はへらへら笑ひけるかな
へらへらと笑ひし顔のさびしかり青くつめたくみえにけるかも
酒のみて歌をうたふを淫乱とおもふな女さびしければぞ
寂しさは沼の水泥にうづもれし壺のこころのごとき夜の更け
虫のごと呼吸たへるまで秋さむの河岸にいで歌をうたはむ
いねがたく詩集手にとり表紙画のあを
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