ぶかも
栗色の丸テーブルに酒代《さかしろ》の銀貨ををけばころげたるかも
広野
野にたちてひとさし指をたかくあげとまる小蜻蛉《こあきつ》とらへけるかも
眼もはるの野の一角に風おきぬ盆花ちりぬあかく小さく
ほろびたる秋の草花手にとりて月のひかりにすかしみるかな
ほそりゆく道の極みにひろびろの野をみいだして走りけるかも
はるばると来はきつれども平原にあゆむあてなし草に坐りぬ
さびしきは村の端《は》づれのはねつるべ半円ゑがききしるなりけり
風わたる野の枯草のいたましさ折りて抱《いだ》けど顫《ふる》ひやまぬかも
ゆきづりにつみし稲穂のつぶつぶをしみじみ噛みてあゆみけるかな
朝の陽の苺のあかさ眼にひろひ山いつさんにくだりけるかな
黄昏れの山上にきて街みれば電灯ぱつとともりたるかな
山に立ち街みをろせばたくさんの魔術師街をあゆみ居るかも
ぴろろろろクラリオネット夕暮れのしづけさやぶり街に流るる
うづくまり松の根もとの蟻をみるゆき逢ふごとに低頭《じぎ》をして居る
山狭の土の窪みにくさぶきの屋根かたぶけてすまへるか人は
もの言はぬ男のごとく焼山の樹々すくすくとたちにけ
前へ
次へ
全29ページ中14ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小熊 秀雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング