んをよびあそびけるかな

お可笑《かし》けれおみな子なれば母ぶりて人形などを抱くなりけり

さんだんにうねりてみゆるお河童《かつぱ》の髪ゆりていまし駆《かけ》りくるかな

女なればうちまたにあゆむ咲ちやんのちさき足袋はましろなるかも

おはぢきにわざと負ければうれしきと手ふり足ふり踊るなりけり


金魚と死

霜ふればしんじつ命愛《は》しとおもひ金魚に死ねといひにけるかな

千べん万べん命のかぎり玻璃鉢の金魚はあはれ尾鰭《をひれ》うごかす

くれないの金魚は体かたむけてあはれ大きく水のみしかな

六匹の金魚いつしか一匹となりし朝なり雪ふりしかも

なにもなき金魚の鉢のさびしさに炉石《ろろし》おとせば底に鳴るかも


酒場と南京玉

おのれてふ男はついに酒をのむことを知りしがさびしさはます

冷えまさる秋の夜更けに酒のめば懐さむくなりにける哉

銀色の尻《しり》振《ふり》時計《とけい》しりふるをみつつに酒をのめばさびしも

酒肆《さかみせ》の女のつなぐ青赤の南京玉はよくひかるかも

青赤の南京玉を灯《ひ》のもとにひとつひとつにつなぐ淋しさ

さやさやと秋の葉ずれの音たてて南京玉のよくころ
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