《あらそ》べの石ころみちのでこぼこを馬車たかなりてすぎるみゆかも

うらぎりの君のにくさに草の実をつぶせばあかき血のながれたり

フレップを摘まむとすればその色の処女《おぼこ》にあらず君の乳のいろ

食人鬼の童のごとし童らは草の実食みて口あかきかも


母と逢ひて

いたいたしくやせほそりたる吾《あ》の母の人力《じんりき》車にのるをながめたるかも

うれしくてうれしくて吾《あ》はなきにけり幌《ほろ》ををろせといひにけるかな

うれしくてうれしくて吾はいくたびも洟《はな》をかむなり飯《いひ》食《を》しにつつ

わが母のいつとせ前の疳症《かんしよう》のひたいのすぢののこりたるかも


子供王国

童子ひとりおもちやの弓をひきしぼり矢叫けびたかくはなちけるかも

だんだらの道化の帽子かむりたる童子はついになきにけるかな

いちにんの童子は煙草のむまねをなしてゐるなり悲しからずや

いちにんの童子は童女と草つみて夫婦《めをと》ごつこをするがかなしき

童子らのなすことをじつとみてをれば草にかぎろひうすらたつみゆ


場末印象

なにかしらかなしきものの澱《をど》みゐる場末の空気吸《すへ》ばさび
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