外の者には興味無之ものに御座候。以上。
[#地から2字上げ]エム、ファラデー
四七 質問
時々は手紙で質問し、返事を乞うた人もある。この中で面白いのは、ある囚人[#「囚人」に傍点]のよこした手紙である。
「貴下のなされし科学上の大発見を学びおれば、余は禁囚の身の悲しみをも忘れ、また光陰の過ぐるも知らず候」という書き出しで「水の下、地の下で、火薬に点火し得るごとき火花を生ずるに、最も簡単なる電池の組み合わせはいかにすべきや。従来用いしものはウォーラストン氏の原理によりて作れる三十ないし四十個の電池なるも、これにては大に過ぎ、郊外にて用うるには不便に候。これと同様の働きを二個の螺旋《らせん》にてはなし得まじく候や。もしなし得るものとせば、その大さは幾何に候や」というので、つまり科学を戦争に応用せん[#「科学を戦争に応用せん」に傍点]とするのである。
囚人でありながら、こんな事を考えていたのはそもそも誰であったろうか。後にナポレオン三世[#「後にナポレオン三世」に傍点]になったルイ・ナポレオンその人で、その頃はハムの城砦《じょうさい》に囚われておったのだ。
ナポレオンはそ
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