調べたのかね。」
「いや、まだです。」
ファラデーは頁《ページ》をくって、
「これは四十年も前に判っている事ではないか。このようなことで、私の時間をつぶさないようにしてくれ給え。」
しかし、誰か新しい発見[#「新しい発見」に傍点]でもすると、ファラデーは人を招いて、これを見せたものだ。発見の喜びを他人に分つというつもりである。キルヒホッフがスペクトル分析法を発見したときにも、ファラデーはいろいろな人に実験して見せた。ブルデット・クート男爵夫人に出した手紙には、
[#天から4字下げ]五月十七日、金曜日、
拝啓明日四時にマックス・ミュラー氏の講演すみし後、サー・ヘンリー・ホーランドに近頃ミューニッヒより到着せる器械をもって、ブンゼンおよびキルヒホッフ両氏の発見したるスペクトルの分析を御目にかくるはずに相なりおり候。バルロー君も来会せらるべく、氏よりして貴男爵夫人もその時刻を知りたき御思召の由承わり申候。もし学究の仕事と生活とを御了知遊ばされたき御思召に有之、かつ実験は小生室にて御覧に入るるため、狭き階段を上り給うの労を御厭い無之候わば、是非御来臨願い度と存候。誠に実験は理解力のある以
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