[#「科学上の学会にも出席しない」に傍点]。委員にもならない。これは一つは議論に加わって、感情に走るのを好まなかったためでもあろうが、主として自分の発見に全力を集めるためであった。
 食事に招かれても行かないし[#「食事に招かれても行かないし」に傍点]、たとい晩餐に出席しても、直きに帰って来る[#「直きに帰って来る」に傍点]という風であった。旅行先でも、箇人の御馳走は断わった。訪問を受ける時間にも制限[#「制限」に傍点]をもうけた。これでいかに自分の力を発見に集中したかが窺《うかが》われる。
 田園生活や、文学美術の事にも時間を費さない。鳥や獣や花を眺めるのは好きだったが、さてこれを自分で飼ったり作ったりして見ようとはしなかった。音楽も好きではあったが、研究している間は少しも音を立てさせなかった。

     四六 訪問と招待

 時々、訪問者[#「訪問者」に傍点]があるので困った。ある朝、若い人が来て、新研究をお話し致したいと、さも大発見をしたようにいうので、ファラデーは面会して、話をきいた。やがて書棚にあるリーの叢書《そうしょ》の一冊をとって、
「君の発見はこの本に出てはいないか。
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