の後にも「鉛のように軟《やわらか》くて、しかも鎔解しにくい合金は出来まいか。」という質問をよこしたこともある。「実験に入要な費用は別に払うから」ということまで、附記して来た。
ファラデーの返事は大抵簡単明亮であった。
四八 ローヤル・ソサイテーの会長
英国で科学者のもっとも名誉とする位置はローヤル・ソサイテーの会長である。ファラデーは勧められたが、辞退してならなかった[#「辞退してならなかった」に傍点]。
一八五七年、ロッテスレー男爵が会長をやめるとき、委員会ではファラデーを会長に推選することになり、ロッテスレー男、グローブ、ガシオットが委員の代表者となって、ファラデーに会長就任を勧めにやって来た。皆が最善《ベスト》をつくして勧めたし、また多数の科学者も均しくこれを希望しておった。
ファラデーは元来、物事を即決する気風の人で、自分もこれに気づいているので、重要の事はいつも考慮する時間を置いて[#「考慮する時間を置いて」に傍点]、しかる後に決定するというのを恒例[#「恒例」に傍点]にした。この時も恒例に従いて、返事は明日ということで、委員の代表者をかえした。
翌朝
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